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良性疾患での子宮摘出は腎細胞癌リスクを高める

良性疾患で子宮摘出術を受けた女性を術後長期にわたって追跡した集団ベースのコホート研究で、子宮摘出術を受けた女性では、子宮摘出を受けていない女性に比べて腎細胞癌リスクが50%上昇した状態が、20年以上持続することが報告されました(Arch Intern Med誌2010年12月13/27日号)。

米国では毎年60万件を超える子宮摘出術が行われています。

今回で得られた結果は、良性疾患による 子宮摘出が腎細胞癌リスクを有意に上昇させること、特に若いうちに子宮摘出術を受けた女性のリスクが高いことを示しています。

なぜ子宮摘出後に腎細胞癌が発生しやすいのかについては不明ですが、例えば摘出時に遠位尿管によじれや狭窄が生じた結果などが論文では推定されています。このような外科操作による臓器・組織損傷は治療につきものですので、子宮癌以外の良性腫瘍では子宮温存が望まれるところです。

論文の詳細はコチラ

→子宮摘出術が腎細胞癌リスクに及ぼす長期的な影響を知るために、スウェーデン国民の医療記録データベースから情報を抽出した。同国ではすべての 国民に関する医療情報の登録が義務付けられている。入院登録と癌登録のデータと照合し、1973年1月1日から2003年12月31日までに子宮摘出術を 受けたすべての女性を同定した。

18歳以上で良性疾患により子宮摘出術を受けた18万4945人と、マッチするコントロール65万7288人を、03年12月31日まで、または、死亡、移住、腎細胞癌の診断、尿管癌(腎盂と尿管の癌)の診断、膀胱癌の診断、その他の原発癌の診断まで追跡した。

子宮摘出群では206万1556人-年の追跡で357人(0.20%)が、コントロールでは763万1824人-年の追跡で995人(0.15%)が、そ れぞれ腎細胞癌と診断されていた。腎細胞癌の粗の罹患率は、子宮摘出術を受けた女性では10万人-年当たり17.4、コントロール女性では13.1。生 年、摘出術時の居住地域で調整したハザード比は1.50(95%信頼区間1.33-1.69)となった。

腎細胞癌リスクは子宮摘出術 を受けた年齢と逆相関していた。摘出が44歳以下だった患者群のハザード比は2.03(1.55-2.67)、45〜49歳では 1.47(1.17-1.85)、50〜57歳は1.29(1.01-1.64)、58歳以上は1.43(1.12-1.83)。

腎臓癌リスクが最も高かったのは、44歳以下で子宮摘出術を受けた女性の術後10年間だった(ハザード比2.36、1.49-3.75)。

摘出群全体では、術後の腎細胞癌リスクは経過した年数にかかわらずほぼ一定だった。0〜10年のハザード比は1.50(1.26-1.78)、11〜20年が1.49(1.22-1.82)、20年以上経過したグループのハザード比は1.51(1.05-2.16)。子宮摘出術の術式と腎細胞癌の関係を調べた。リスクは腹式子宮全摘術を受けた患者(コントロールと比較したハザード比は1.51、1.31-1.74)で 高かった。一方、膣式子宮摘出術を受けた患者では低く、リスク上昇は有意にならなかった(ハザード比0.75、0.45-1.23)。腹腔鏡を用いた子宮 摘出術については、適用された患者が少なく、腎細胞癌の発症がなかった。

子宮摘出群とコントロールの間で尿管癌と膀胱癌の罹患率も比較 した。尿管癌については有意差は見られなかった。10万人-年当たりの罹患率は摘出群2.04(1.51-2.76)、コントロールが 1.95(1.66-2.29)で、調整ハザード比は1.24(0.88-1.75)となった。

膀胱癌の罹患率は、摘出群が 15.72(14.09-17.52)、コントロールが15.33(14.48-16.23)、調整ハザード比は1.21(1.07-1.37)。ただし 膀胱癌のリスク上昇は術後10年間のみ有意で、10年を超えると有意なリスク上昇は見られなくなった。

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